エンさんNote

テレワークとFIREの間で天涯孤独のアラフィフおじさんが日々考えた事や勉強した事を書きます

宮本常一著「忘れられた日本人」

美化されがちな昔の日本にだって、いろいろあるのです

丹念なフィールドワークにより描かれた戦後日本の農村風景。
民俗学研究と言うような固い切り口ではなく、
著者が村民たちと近い距離から観察した記録がいきいきと描かれています。

現在から当時の人々を想像してみると、地味に真面目に働きながら暮らす
清廉潔白なイメージだったのですが、実際は現在では犯罪になるような事も
日常的に行われていてイメージを覆されました。

でも、それも当然と言えば当然です。
いつの間にか美化していましたが、所詮は同じ人間。
たった100年にも満たない程度の年月ではその本質は変わりません。

ただ学ぶ事も多く、村の運営に関しては
徹底した話し合いについて行われていたエピソードなど、
民主主義の原点を思い出させてくれます。

日本文化の均一化が進み、地域自治はあるものの過去のそれに比べれば
随分と形骸的になってしまいました。
集合住宅でさえ隣人の顔も知らずに暮らしています。

かつての村の機能は今では行政が担っているわけですが、
その能力にも限界があります。民間業者は利用するにはお金が必要で
誰でも心置きなく利用できるわけではありません。

それでいて、人と人が繋がるツールの進化は今も日進月歩の世界です。

プライバシーの名の下に隣人の顔さえ知らない我々が、
なぜ物理的な距離や地域自治と言う枠組みを一足飛びにして、
遠方さらには異国の人と必死に繋がりたがるのでしょう。

そんな疑問を再考させられる、人と人が共に暮らすとはどういう事について
改めて向き合わせてくれた本でした。

天涯孤独の身の私ですが、一人で生きていけるなんて微塵も思っていません。
現代社会に即した人や地域、行政との繋がりを大切にしたいと思います。

ちなみにですが、作中には「土佐源氏」なる盲目の乞食の語るエピソードが
収められています。

その下りは特に絶賛されているようです。
美化されがちな昔の暮らしですが、そこには良い事も悪い事もあるのです。

ただ、この「土佐源氏」には種本があったようで、
それを著者が脚色して紹介したとの話もあり、
それについて書かれた暴露本(?)もあるようです。

より深く周辺情報を知るためにも、「土佐源氏」に興味を持たれた方は
こちらにも手を伸ばしてみてはいかがでしょうか。