エンさんNote

テレワークとFIREの間で天涯孤独のアラフィフおじさんが日々考えた事や勉強した事を書きます

石井妙子著「原節子の真実」

原節子として生ききった會田昌江さん

女帝 小池百合子」で石井妙子さんの存在を知りました。
その筆力にひかれて他の著書も読んでみたいと思い、
目に止まったのがこの本です。

新潮ドキュメント賞を受賞しているだけあって、内容も期待通りでした。

石井氏は著書の数自体はそれほど多くないので、一点集中型、
ライトな作品を乱発するのではなく、
渾身の一冊を書き上げるタイプのノンフィクション作家のようです。

戦前、戦中、戦後を生き抜いた原節子さん。
最初は生活のためと割り切って映画女優になりますが、
生まれ持った美貌と努力でトップスターとして夜に名を残す事となります。

当時の映画女優は今と違って映画会社に所属の従業員のような位置づけ。
オーディオブックに例えるなら、
オトバンクがナレーターを直接雇用しているのと同じです。

原さんは舞台女優と違って、映画女優に技術はいらないと言います。
編集者や撮影技術でその不足をいくらでも補えるからだそうです。

確かにそう言う部分はありますが、映画には映画特有のスキルも必要なはず。
画面に大きく映し出される顔のひとつとって見ても、
美貌は大きな武器となります。

その点で原さんは映画女優の申し子だったと言えましょう。
多くの出演作品は、戦争で困窮する国民に一服の清涼剤となります。

そして、原さん自身も會田昌江(本名)と原節子
切り離して考えていたようです。

すでに原節子は自分だけのものではない。
そんな覚悟を常に持ち続け、
原節子のまま国民の前からフェードアウトするのです。

「墓まで持っていく」と言う言い回しがありますが、
まさにそれを実行されました。

1962年に引退され、2015年に亡くなられました。

原節子でなくなってからも、約半世紀もの間
隠遁生活を送りながら、それを守り続けたわけです。

人は一人で生きてると勘違いしがちですが、
実際には世界中の人が見えない糸で繋がっています。
できる事なら、少しでも多く人のためになる仕事をしたいものです。

しかし、その仕事が大きければ大きいほどその代償も大きい。
偉業を成し遂げるには努力だけではなく、常に謙虚であり続け、
アイデンティティを犠牲にする事も厭わない覚悟が必要です。

原さんの余生を目の当たりにして、そんな事を感じました。