エンさんNote

テレワークとFIREの間で天涯孤独のアラフィフおじさんが日々考えた事や勉強した事を書きます

石井妙子著「女帝 小池百合子」

誠実に淡々と語られる女帝の光と影

綿密な取材と調査に裏打ちされた事実に基づく、
濃厚で骨太なノンフィクションでした。力作です。大変面白かった。
これほどの作品を書ける作家が、はたして日本に何人いるでしょう。

知事選に関しては、自治体に関しては大きな権力を持つのに、
当選するのは経歴よりも知名度を持ち合わせた人が多く疑問でした。
その重責は勉強した人に担って欲しいものです。

その点、小池百合子氏の関しては
お恥ずかしい話、私は勘違いしていました。

カイロ大学卒、経済番組キャスター、議員経験と
知名度に頼って選ばれた知事の中ではまともな方だと思っていました。

前回の知事選の時は、まるで小泉劇場の再来かのような
勧善懲悪ストーリーを展開して圧勝したわけですが、
その中の1票が私である事をここに告白します。

本作は著者による周辺人物への取材、刊行物、テレビ出演時のコメントなど、
ただある事実が淡々と語られています。
決して作為的に読者の印象を捻じ曲げようとしている意図は感じません。

丁寧にその周辺の砂や土を取り払うことで、
小池百合子氏の人となりを発掘しています。

我々は投票する時に何を判断材料にしているでしょうか。
おそらくは知名度、そして直近のせいぜい1〜2週間程度の印象で
以後数年続く任期を与えてはいないでしょうか。

私もお恥ずかしい話、小池百合子氏の政党を渡り歩いた遍歴など、
ほとんど忘れていました。

本人の発する耳障りの良い言葉に惑わされる事なく、
これまでの経歴や実績をきちんと見極めた上で投票したいと思います。

この本を読んで、なお小池百合子氏に投票しようと思う人は少ないでしょう。

ですが、ベストセラーとなったところで都民の有権者の何%が読み、
その中の何%が投票所に足を運ぶかを考えれば、
投票結果への影響は無いに等しいと思います。

きっと、小池百合子氏が再選するでしょう。

彼女によって混乱し、迷惑を被った数々の案件は
彼女のイメージ戦略によって緑色に塗りつぶされ、
私物化した都政や人事がマスコミによって炙り出される事はありません。

その資質も資格もないリーダーによって招かれる災厄は、
直接選挙によって都政に送り出した我々有権者が被らなければならないのです。

投票日の前に、この本を読めて良かったです。

いま小池百合子氏にまつわる最も大きな関心事は学歴詐称疑惑ですが、
私は何十年も前の学歴が争点になる事は、
直近に大きな問題がない事の裏付けのように感じていました。

正直、また小池百合子氏に投票するつもりでいました。
しかし、この本を読み終えた今、同じ気持ちにはなれません。
他の候補者を経歴と実績に基づいて選びます。

なので、逆に言えば知名度頼りの候補者擁立は本当にやめて頂きたい。
選挙はエンターテイメントではありません。
一時のムーブメントで今後数年間の舵取りを決定するわけには行かないのです。

知名度のある候補者が思慮の浅い投票行動によって当選し、
そのおぼつかない舵取りが政治に混乱を招く事の繰り返しは、
断ち切らなければなりません。

もはや候補者本人の言葉だけでなく、
それらを不誠実に報じるマスコミも当てになりません。

この本だってあらゆる情報の一部。
中身の全てが正しいかは読者が判断しなければなりません。

そう言う意味では、この本は投票すると言う行為によって発生する責任を
改めて実感させてくれました。

現職の都知事について書かれた本ではありますが、
都民に関わらずとも読んで頂き、
一票を投じる責務と改めて向き合う機会にして頂ければと思います。